ブードゥーの魔法を行う方法
ヴードゥーとは? 過去の遺物、現代の迷信? それは奴隷たちの心のより所なのである(供 - 天地の超常現象
元々はキリスト教の唯一神である。ハイチでは、人々の85%はカトリックの洗礼を受けている。にもかかわらず、人々の90%はヴードゥーの教えを信仰しているという。
こう聞くと、まともなキリスト教徒は目をひそめるに違いない。
しかし、これは全く矛盾しないのだ。なぜなら、ヴードゥーの神
話体系は、あらゆる外来の神々を組み込んでしまうのだから。
人々は、ヴードゥーの神々の一柱としてエホヴァを信仰してい
るだけなのだ。
そして、エホヴァはヴードゥーの神々の中でも
非常に有力な神の一つであることは否定されない。多くのヴー
ドゥーの儀式がエホヴァの名のもとに行われる、し、オウンガン
もしばしばエホヴァを魔法力の源泉として使用する。このよう
なことが、良いか悪いかはわからない。キリスト教から見れば
悪いことなのだろう。だが、ヴードウーとはそういうものなのだ。
◆エルズーリー
ヴードウーの愛の女神にして、恐るべき女神である。
愛の女神としてはエルズーリー・フレイダと呼ばれる。多く
の神話では、愛の女神は豊穣神であり、何人もの子どもを産む
が、エルズーリーには、子どもはいない。また、特定の夫もい
ない。あえていうなら、全ての男性がエルズーリーの夫である。
彼女は若く美しいムラート(白人と黒人の混血)の女性であ
る。エルズーリーの祭祀は木曜と土曜の夜で、あらゆる年齢と
身分の男性が、その身を捧げるために神殿に集う。エルズーリ
ーは嫉妬深い女神であり、このような男性には、たとえ妻や恋
人でさえ、たわむれに抱擁したりキスしたりしようとしない。
彼女の怒りが恐ろしいのだ。この夜に、エルズーリーは男たち
を訪れて、輝かしい法悦に包み込むのだ。あまりにエルズーリ
ーが完璧なために、何百人もの妻たちが、夫を取り上げられて
しまったという。
男たちに対しては、エルズーリーは情け深い神である。彼女
の信奉者を出世させ、幸せにしてやる。
しかし、女たちに対しては容赦がない。家にエルズーリーの
祭壇を作らない家庭の娘には、決しで夫が現れることがないし、
しばしば娘たちの恋を破滅に導くこともある。それどころか、
しばしば彼女の夫を自分の夫に選ぶのだ。こうなると、妻はエ
ルズーリーのために埃ひとつないきれいな部屋を用意してやら
ねばならず、しかも掃除のときなどを除いて部屋に入ることも
できない。そして、自分の夫がその部屋で待つ女神に召される
のを我慢するしかないのだ。
しかし、このような多情な愛の女神としてのエルズーリーの
他に、赤い目のエルズーリー(エルズーリー・ジェリレージュ)
がいる。彼女は、ペトロの神々の一柱で、年老いた、見るもお
ぞましい女神だという。
ヴードゥーの魔法
◆ソンビ
ヴードゥーといえば、誰もがゾンビと即答するであろう。し
かし、その知識とは、アメリカ製ホラー映画の腐った死体を
一歩も出ていない人が多い。それでは本物のソンビとは、どん
なものなのだろうか。
ホラー映画でしかソンビを知らない人は、まずここで大きな
インパクトを受けるだろう。それは、ゾンビは腐っていないと
いう事実だ。
次に、ソンビは邪悪な鷹法使いが、死者を冒涜して作り出す
ものだと思っている人が多いだろう。しかし、ソンビは無法者
など、社会のあり方を壊す者に対する刑罰であり、ソンビにさ
れるという恐怖が社会の秩序を守っていることも事実なのだ。
それでは、本物のソンビは、どのようにして作られるどのよ
うなものなのだろうか。
ソンビを作るためには、まず「ソンビ・パウダー」を作らな
ければならない。ソンビ・パウダーの製法は、以下のようにし
て行われる。
雷石(稲妻の霊ソボとシャンゴによって作られた神聖な石。
学者によれば古代の石斧であるという)に呪いの液(アルコー
ルらしい)をふりかけ、粉々に砕く。さらに、死体(ソンビに
するものとは別の腐敗したもの)の骨をすり潰した粉、トカゲ、
ヒキガエル、チャ・チャ(ねむの木の一種)、辛い豆(トビカ
ズラの一種)、フグなどを混ぜる。
こうして作られたソンビ・パウダーはめざす相手の家の前
に、十字架の形にまく。すると、粉の毒が足から吸収されて、
目標となった人間は、顔色が青くなり、感覚が狂い、ついには
死んでしまう。
こうなって埋葬された人間を、密かに掘り出して、解毒剤を
与える。あまり長い間だと、腐敗してしまったり、発掘前に目
を覚ましてしまうかもしれないからだ。
解毒剤には3つの目的がある。まず、人間の死による霊的
構成要素の変質を防ぐ。次に、グロ・ボンナンジュが、その源
に帰らないようにする。最後に、ナームを保ち続けて腐敗しな
いようにする。その作り方は、バヤボンドの葉をひと掴み、ア
ヴエの枝2本、レモン3個などで、粉末にして壹に入れて2日
間ほど地下に埋めておく。これに、植物を2種、さらに触れる
と肌がかぶれる植物を4種類である。
これらの知識は、元々はアフリカから持ち込まれたものだと
思われる。アフリカで呪術師だった人々が、新たな土地に連れ
てこられ、そこで自分たちの故郷の植物と似た作用をもつ植物
や、よく似た動物を探し出し、どうしても見つからない部分は、
推測と実験とで補いながら作り出したものだと考えられる。
ゾンビ・パウダーによって、人間は「魂のソンビ」(ソン
ビ・アストラル)と「肉のソンビ」(ソンビ・カダーヴル)に
分離される。具体的には、人間からティ・ボンナンジュが取り1
出されて、魂のソンビとなり、残された3つ(ゼトアールは、
元から肉体には宿っていないので、残る3つの構成要素)が肉ゾ
のソンビとなるのだ。 |
肉のゾンビは、ティ・ボンナンジュを支配している者の言い
なりになってしまう。
これは、死よりも恐ろしい刑罰である。死んでしまった魂は、
ロア(ヴードゥーの神)となったり、生まれ変わったりするが、
ソンビとなってしまうとそれすら不可能なのだ。
この運命を避けるため、ハイチでは死者が出ると、死者に毒
を飲ませたり、首を切り離したりすることがある。さすがに、
こうなった者をソンビにすることはできないからだ。
◆ヴードゥー人形
ヴードゥーの呪いを行うための呪物とされているが、奇妙な
ことに本家ハイチにおいて、ヴードゥー人形は全く知られてい
ない。
一般に知られているヴードゥー人形は、呪う相手に見立てて
針や釘を刺すことで、相手に不幸を起こすという、呪術でいう
類感呪術そのものを行う道具である。同様のものは、日本の
呪いの藁人形(丑の刻参り)など世界各国に存在する。このた
め、本来のヴードゥーには存在しなかったものが、映画や小説
などの作者が想像で作り出したのではないかと考えられている。
だが、ヴードゥー人形はあまりに有名になり、ソンビと並ん
でヴードゥーのイメージの一つとなってしまった。このため現
在では、ハイチのおみやげ品としてヴードゥー人形を手に入れ
ることができる。
ただし、ヴードゥーの秘儀は門外不出のものであるため、外
部のものにはどのような儀式があるのか、最終的にはわからな
い。そこで、実はヴードゥーの秘儀としてヴードゥー人形とい
うものが実際に存在し、その情報の断片が広まって、現在のヴ
ードゥー人形を作り出したという可能性は否定できない。
◆人身御供
「バ・ムーンの儀式」と呼ばれるもので、悪魔に自分自身を
売り渡すことで、人生の成功を収める術である。
この儀式を行った場合は、毎年一人ずつ人身御供を差し出さなければならない。
しかも、それは奴隷などの自分と無関係の
者ではいけない。妻や子、親や友人など、本人が失って悲しい者、本人がそれを犠牲だと感じるものでなければならない。
もしも、このような者がいなくなった場合、もしくはそのような者を犠牲にできなかった場合は、本人が生け賛にならなければならない。
ハイチでは、人身御供で富や権力を得た者の末路を語る物語がいくつも残されている。
0 コメント:
コメントを投稿