2012年4月21日土曜日

アラビア湾が見えるよ


ルーデヴィックの実験材料/Ludevic's Test Subject - イニストラード レア
Ludevic's Test Subject / ルーデヴィックの実験材料 (1)(青)
クリーチャー - トカゲ(Lizard)
防衛
(1)(青):ルーデヴィックの実験材料の上に孵化(hatchling)カウンターを1個置く。その後、それの上に孵化カウンターが5個以上置かれている場合、それらをすべて取り除き、それを変身させる。
0/3
引用元:

Ludevic's Abomination / ルーデヴィックの嫌悪者
〔青〕 クリーチャー - トカゲ(Lizard) ホラー(Horror)
トランプル
13/13
引用元:


イニストラードのFAQから引用(註1):
 《ルーデヴィックの実験材料》の能力を、自身に対応して複数回起動して、5つ目の孵化カウンターが《ルーデヴィックの嫌悪者》 の上に置くことも可能である(お勧めする訳ではない)。そうなった場合、それは変身して《ルーデヴィックの実験材料》に戻る。

(註1) イニストラードのFAQから引用
 上記の日本語版FAQは以下の「イニストラード よくある質問集」から引用した。
 

(余談)
 蛇足かもしれないけど補足。カウンターを乗せる起動型能力を10回連続でスタックに積んで順に解決した場合どうなるかというと……

 1回目:1個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 2回目:2個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 3回目:3個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 4回目:4個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 5回目:5個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でなので全て取り除き変身

 6回目:1個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 7回目:2個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 8回目:3個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 9回目:4個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でないので何も起きない。
 10回目:5個目の孵化カウンターが置かれる。5個以上でなので全て取り除き変身

 能力にある「ルーデヴィックの実験材料の上に~」が、変身後も「ルーデヴィックの嫌悪者の上に~」と読みかえられてそのまま処理され、能力にあるとおり「カウンターが5個以上置かれている場合、それらをすべて取り除き、それを変身させる」という効果が誘発する。

元記事:

血統の切断/Sever the Bloodline - イニストラード レア
Sever the Bloodline / 血統の切断 (3)(黒)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とし、それと、そのクリーチャーと同じ名前を持つ他のすべてのクリーチャーを追放する。
フラッシュバック(5)(黒)(黒)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
引用元:

イニストラードのFAQから引用(註1):
 両面カードは、表になっている面の名前のみを持つ。例えば、《血統の切断》で《村の鉄鍛冶》を対象にしても、《鉄牙》は追放されない。

(註1) イニストラードのFAQから引用
 上記の日本語版FAQは以下の「イニストラード よくある質問集」から引用した。
 

元記事:

天使の監視者/Angelic Overseer - イニストラード 神話レア
Angelic Overseer / 天使の監視者 (3)(白)(白)
クリーチャー - 天使(Angel)
飛行
あなたが人間(Human)をコントロールしている限り、天使の監視者は呪禁を持つとともに破壊されない。
5/3
引用元:

イニストラードのFAQから引用(註1):
 あなたが人間をコントロールしている場合に、《天使の監視者》に致死ダメージが与えられた場合、そのダメージはそのターンの間負われたままである。そのターンの後の時点であなたが人間をコントロールしていない状態になった場合、《天使の監視者》は破壊される。

(註1) イニストラードのFAQから引用
 上記の日本語版FAQは以下の「イニストラード よくある質問集」から引用した。
 

元記事:

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 新セット発売後の Card of the Day だけど FAQ 週間にはならなかったもよう。それだけなら大した驚きもないんだけど、月曜日以降はイニストラード以外のカードがとりあげられていたことは意外だった。

余談2:月曜日 《月霧/Moonmist》

 たまに出てくる《濃霧/Fog》の亜種。ダメージを与えることが出来るのは狼男と狼のみ、ということに加えて、人間を狼男に変身させる。なるほど。こういうカードのために狼男形態のときは人間のクリーチャータイプを持っていないのか。

 フレーバー的には「月が出ているので狼男の本性があらわになる」+「霧が出ているので攻撃が当たらなくなる。ただし月が出てるので感覚が鋭敏になっている狼男は野生の勘とか嗅覚とかで当ててくる」という感じかな。

余談3:火曜日 《Bureaucracy》

 最初訳すときは「piってなんだ?」と混乱したけど、調べたら分かった。結果オーライ。でも本当にこの解釈で合ってるのかどうか分からない。

余談4:水曜日 《結界師ズアー/Zur the Enchanter》

 ほんっとうに今更なんだけど「Zuran」って言葉は「ズアーの」って意味だったのか。《Zuran Orb》にはあれだけお世話になってたのに気づかなかった。

 まったくの余談。中東の雄であるサウジアラビアという国を治めている王家は「サウド家(Saud)」。そして「サウドの」を表す言葉が「Saudi」。

 つまり「サウジアラビア」という国名の意味は「サウド家のアラビア」ということで、この国はその名のとおり「丸ごと王族の所有物」である。まさに絶対王政。

余談5:木曜日 《永遠の証人/Eternal Witness》

 最初読んだときは「Community Ratingってなんだろう?」と不思議だった。フォーラムかどこかで使われている指標なのかな、と思ったけど、そういえば公式サイトのカード検索であるGathererでいつも画面下に星マークが並んでたな、と思いだしたおかげで助かった。

 星1個から5個までの5段階評価なのか、星0個から5個までの6段階評価なのかが気になったので《蒼ざめた月/Pale Moon》の評価を調べてみた。10月05日現在のCommunity Ratingは「1.086」なのでどうやら星1個が最低値らしい。

余談6:金曜日 《マーフォークの海忍び/Merfolk Seastalkers》

 マジックを始めたての頃は《洪水/Flood》が意外と強くて困った記憶がある。青単色に使われると地上クリーチャーが簡単に止まった。

 それはさておき記事の話。この回の記事にあるとおり「ゲームバランス的にそうなってるんだろう、ってことも、あえてフレイバーで解釈すると楽しいよね」にはもろ手を上げて賛同。

 やっぱり海から忍び寄ってきて足を引っ張るマーフォークなんだから、空飛んでる相手には手を出せないはずだよ、うん。

余談7:イニストラードのカードのレビュー紹介

 LSVによるイニストラードカードのレビューをTakuさんが翻訳されてて、これが結構面白いので皆さんも読んでみたらいいと思う。

 【翻訳】イニストラード・レビュー 白 part1 (by LSV)
  

 ここのコメントにも書いた《修道院の若者/Cloistered Youth》の話。最初にこのカードを見たときは「なかなかフレイバーに沿ったいいカードじゃないか」と思ってたんだけど、Takuさんに言われて気づいた。

 これ、変身したら元に戻らないのか!

 うーん、夜が来ると豹変して被保護者(=プレイヤー)まで傷つけるほどに見境のない暴力をふるうけど昼間が来たらまた夜が来るのに怯える無力な女性に戻ってしまう、まででフレイバー完成だと思う。それだと弱すぎるか。仕方ない。

余談8:【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間(以下略)

 まだ分からないままの箇所のうち特に気になってる箇所をそっと引き続き掲載してみる。ただ、さすがに来週はもう載せない。

(*6)
 2日間で5時間しか睡眠をとってないと細かいミスは増えるし、マッドサイエンティストみたいに狂ったような笑い声を上げ続けることになる。

原文:
 Five hours of sleep in two days will make you miss things the little things, like (for example) grossly overextending while cackling like a mad scientist.

(*8)
 ランジェリーそのものな衣装もね。僕はアニメの大ファンってわけじゃないけど、見かけたいくつかコスプレは神に誓って素晴らしいものだったよ。

原文:
 And then there's the lingerie. I'm not a huge anime fan, but god bless any IP that makes some of the sights we saw socially acceptable.


マーフォークの海忍び/Merfolk Seastalkers - ゼンディカー アンコモン
Merfolk Seastalkers / マーフォークの海忍び (3)(青)
クリーチャー マーフォーク(Merfolk) スカウト(Scout)
島渡り
(2)(青):飛行を持たないクリーチャー1体を対象とし、それをタップする。
2/3
引用元:

 《マーフォークの海忍び/Merfolk Seastalkers》が飛行を持ったクリーチャーをタップできない本当の理由はゲームバランスを考慮してのことだ。しかしそこはあえて「このマーフォークは局地的な洪水を起こすことができるから」と考えたほうが面白いだろう。

(註1) 洪水
 本文では《洪水/Flood》のカードデータへのリンクが張られている。ザ・ダーク、第4版、第5版と収録されていた《洪水/Flood》は以下のようなカード。
Flood / 洪水 (青)
エンチャント
(青)(青):飛行を持たないクリーチャー1体を対象とし、それをタップする。
引用元:

元記事:

永遠の証人/Eternal Witness - フィフス・ドーン アンコモン
Eternal Witness / 永遠の証人 (1)(緑)(緑)
クリーチャー - 人間(Human) シャーマン(Shaman)
永遠の証人が戦場に出たとき、あなたの墓地にあるカード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
2/1
引用元:

 2004年のアーロン・フォーサイスの記事(註1)によると《永遠の証人/Eternal Witness》はフィフス・ドーンの緑が十分に強くなかったために作られたらしい。
 フィフス・ドーン版のコミュニティ評価(註2)は 4.822 なので、《永遠の証人/Eternal Witness》の現在の評価はアンリミテッド版の《Mox Opal》並みに高いということだ。
 ミッション成功だね!

(註1) 2004年のアーロン・フォーサイスの記事
 原文では以下のURLへのリンクが張ってある。《永遠の証人/Eternal Witness》がどのようにして生まれたかについて書かれた記事。
 

(註2) コミュニティ評価
 原文では「Community Rating」。公式サイトのカード検索機能である「Gatherer」には、カードを星5つで評価する機能がついており、この評価の平均値が「Community Rating」と呼ばれる指標になっている。つまり最大値は「5」。
 ちなみに今現在のフィフス・ドーン版の《永遠の証人/Eternal Witness》の評価は 4.796 で少し下がっているが、今現在の《Mox Opal》の評価である 4.786 を上回っている。

元記事:

結界師ズアー/Zur the Enchanter - コールドスナップ レア
Zur the Enchanter / 結界師ズアー (1)(白)(青)(黒)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
飛行
結界師ズアーが攻撃するたび、あなたはあなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストが3以下のエンチャント・カードを1枚探し、それを戦場に出してもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す。
1/4
引用元:

 コールドスナップはその10年も前(1995年と1996年)に発売されたアイスエイジブロックの続編に当たるため、当時を思い起こさせ懐かしい気持ちにさせてくれるカードがたくさん収録されていた。
 その1枚がこの《結界師ズアー/Zur the Enchanter》だ。彼は7枚のアイスエイジのカードのフレイバーテキスト(註1)に登場している。

(註1) 7枚のアイスエイジのカードのフレイバーテキスト
 "Zur the Enchanter"の言葉(註2)がフレイバーテキストになっているのは以下の7枚。

  《クロヴの魔術師/Krovikan Sorcerer》
  《Mesmeric Trance》
  《Zuran Enchanter》
  《Zuran Spellcaster》
  《Krovikan Elementalist》
  《Thoughtleech》
  《Zuran Orb》

(註2) "Zur the Enchanter"の言葉
 彼の言葉ではないがアイスエイジ版の《対抗呪文/Counterspell》にも名前は出ている。

フレイバーテキスト
 "The duel was going badly for me, and Zur thought I was finished. He boasted that he would eat my soul-but all he ate were his words."
 -Gustha Ebbasdotter, Kjeldoran Royal Mage
 引用元:

元記事:

Bureaucracy - アングルード レア
Bureaucracy (3)(青)(青)
エンチャント
マジック・ザ・ギャザリング・トレーディング・カード・ゲームの参加者(以下「プレイヤー」とする)は、リチャードの手順に関するルールのサブセクション3.1(4)に準じて、各アップキープの開始時に、すでに加えられている一連のアクション(以下「アクション・キュー」とする)を、加えられた順序に従って行う。その後新たなアクションをアクション・キューの最後に追加する。すべてのアクションは単純に体を用いる動作で、プレイヤーが椅子に座ったまま行うことができ、前述のプレイヤーの健康や安全を損なう恐れのないものでなければいけない。
いずれかのプレイヤーが、定められたすべてのアクションを正しい順序で行えなかった場合、Bureaucracyを生け贄に捧げ、前述のプレイヤーは自分の手に持っているすべてのカード(以下「手札」とする)を捨てる。
引用元:

 《Bureaucracy》のイラストが赤いテープで貼りつけられてることには気づいてた?
 ……じゃあ、机に描かれた紋章が迷路になってることは?
 ……ああ、そうかい、じゃあ "Robert's Rules of Order" (註1)が、リチャード・ガーフィールドへの敬意を込めて "Richard's Rules of Order" になってることには? それとおそらくだけど「サブセクション3.1(4)」は、 pi (註2) が元ネタっぽいね。

(註1) "Robert's Rules of Order"
 日本語で「ロバート議事規則」もしくは「ロバート議事法」と呼ばれる議事進行規則。公式サイトによると今も版を重ねており、今は第11版になっているらしい。

(註2) pi
 日本語で言う円周率のこと。ギリシャ文字の π を英語でこう書く。円周率が「3.14 …」と始まるのとかけている、という話。

元記事:


月霧/Moonmist - イニストラード コモン
Moonmist / 月霧 (1)(緑)
インスタント
すべての人間(Human)を変身させる。このターン、狼男(Werewolf)でも狼(Wolf)でもないクリーチャーから与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。(両面カードのみが変身できる。)
引用元:

 《月霧/Moonmist》のイラストには猿人のような体格をしたイニストラードの狼男が描かれている。それは奇妙に図体の大きい人型で、狼のような頭を持ち、力に満ちた上半身とそれに比しては小さい下半身を持っている。
 イニストラードに住まう者たちの外見についてより詳しく知りたければ、Jeremy Jarvisの記事を読んでくれ(註1)。さらにもし君が《月霧/Moonmist》のイラストを気に入ったのなら、ここから壁紙がダウンロードできる(註2)。

(註1) Jeremy Jarvisの記事
 以下のURLへのリンクが張られている。内容はイニストラードの住人や風景などのイラストを取り扱ったもの。英語が苦手でもイラストやデッサン多数で面白いのでおススメ。
 

(註2) 壁紙がダウンロードできる
 以下のURLへのリンクが張られている。《月霧/Moonmist》のイラストの壁紙が手に入る。
 

元記事:

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週もイニストラードの新カードたち。また今週も同じテンプレの使い回しかよ、と思った人もいるかもしれないけど、実は今週からフルスポイラーが発表されているので微妙に先週までと文面が異なっている。

余談2:月曜日 《肉屋の包丁/Butcher's Cleaver》

 このカードを見ていると「うしおととら」や「からくりサーカス」で有名な漫画家・藤田和日郎の短編「美食王の到着」(短編集「暁の歌」収録)に登場した魔法の包丁を思い出す。切ったものをなんでも美味しく食べられるようになる包丁。

 しかしこのカードの場合、実際に切ったものを食せるのは人間のみというあたりに業の深さを感じるというか、イニストラードの世界観に潜む「本当に恐ろしいのは人間」という隠れたテーマが伝わってくる。

余談3:火曜日 《霊捕らえの装置/Geistcatcher's Rig》

 この装置のイラストを含めて、イニストラードの青いカードに散見される「20世紀前半の当時に思い描かれた最先端技術っぽいメカ」を見ていると、1930年代の欧米を舞台にしたグループSNEの「ゴーストハンターRPG」を思い出す。懐かしい。

余談4:水曜日 《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run》

 カード名の「Run」は何を意味してるんだろう。英語名だけ見るとまるでソーサリーみたいだ。効果は「あなたのクリーチャーは全てターン終了時まで速攻と先制攻撃を得ると同時に狼男でもある」という感じ。

 それはさておき「Run」の話。日本語版では「~の地」と訳している。簡単に調べた限りでは「Run」で「~が走り回る場所/土地」という意味はぎりぎりありそう。何にせよ、結構な意訳のように思う。

余談5:木曜日 《心なき召喚/Heartless Summoning》

 効果は、クリーチャー呪文のコストを(2)下げるかわりに自軍のクリーチャーが全て-1/-1されるというもの。イメージ的には、相手の意思を無視して木偶人形のような状態で弱体化したクリーチャーを召喚するかわりに、呼び出すのに必要な魔力は少なくて済む、ということらしい。

 それはさておき、ホラーを目指しているのは分かるけど、イニストラードの絵はなんか気持ち悪いのが多いなあ。このカードもぶよぶよと膨れた死体が天井から吊られているイラスト。

 Card of the Day のページの右側に表示されている広告が動く、という話を前に一度したと思う。今現在の広告は、この《心なき召喚/Heartless Summoning》の死体がぶらぶら揺れているイラストが表示されている。……売る気あるのか。

余談6:金曜日 《無形の美徳/Intangible Virtue》

 クリーチャー・トークンを全体強化するエンチャント。カード名の「Intangible」は、物理的な形や実体を持たないものを指す言葉で、今やってる仕事では「Intangible Asset(無形資産)」という使われ方でよく見る。

 気になったのは、クリーチャー・トークンって無形じゃないよね、ということ。

 これがスピリットを強化するならしっくりくるんだけど、イニストラードのトークン・クリーチャーはスピリット以外にも、狼やら天使やらホムンクルスやらゾンビやら、どれもこれも人間的な心には欠けているかもしれないけど実体のある生物が豊富に用意されている。

 ちょっとイメージがつかみきれないカード。

余談7:【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間見たEDH(以下略)

 最近、翻訳する記事を探す気力も時間もなかったところに折りよく「誰かこれ訳して」という記事を発見したので、これ幸いと訳してみた。どれほど需要があるのかは分からなかったけど、意外と読みにきている人が多くてびっくり。EDHって人気あるんだなー。

 この記事を含めて、Channel FireballやStar City Gamesの記事をたまに訳すと、公式サイトの記事は本当に読みやすい & 訳しやすいということを実感する。スラングや妙にこった言い回しを使っていないからかな。

 言い換えると、今回の記事のような「くだけた文章」を訳すときは公式記事を訳すときとは違う方向の発見があり、これはこれで勉強になるし、訳していて面白いこともある。「CVS」で「コンビニエンスストア」を指すとは知らなかった、とか。

 それはさておき。

 記事のほうにも少し書いたように、今回の記事は訳す際に色々と苦労した。

 苦労した理由は、はっきり言ってしまうと作者の言いたいことをよく分からなかったから。例えば「競技的なEDH」は結局ありなのかなしなのか(そもそも何をもってして「競技的(Competitive)」か否かを決めているのか)、公式の方針に納得いっているのかいないのか、今後のEDH� ��どのようになって欲しいのか、などなど。

 もちろん上記についての意見らしきことも書いてはあるし、よく分からないのはそもそも読解力や英語力が足りないせいかもしれないし、もしかしたら実際にEDHを遊んだことが一度もないからかもしれない(最後のが意外と大きいような気がする)。

 何にせよ、以下が訳に苦労したり訳に自信がなかったりした箇所。

(*1)
 僕らは大半のプレイヤーが集まっている端のテーブルへ向かった。そこではすでに上記のデッキに関する議論が声高に始まっていた。
 議論は徐々に危険なレベルまで白熱しだした。何人かのプレイヤーは、このまま我慢するくらいなら暴力行為にすら訴えそうな勢いだった。

原文:
 We headed over to where the majority of the players had collected at the end of one table and were already loudly discussing the offending players.
 Thinly veiled threats were being tossed out. Some guys were nearly to the point of threatening violence if they were forced to endure what had just happened.


 実際はこの2つの文章は異なる段落になっており、苦労したのは、新しい段落の1つ目の文章である「Thinly veiled threats were being tossed out」の訳。前の段落の末尾も載せておいたほうが分かりやすいかなと思ったので合わせて記載。

 ここは、あえて直訳するなら「徐々に/ゆっくりと + 明らかに/あらわになった + 脅威/問題点が + 投げかけられていた/放り出されていた」という感じになるのかな。普通に考えれば、ここでの「問題点」はエラヨウ使いのプレイヤーたちなんだろうけど、それらは別に「徐々に明らかに」なったわけではないから噛み合わない。

 というわけで、前後の文脈から推測してここに入りそうな文章で埋めてみたのが「議論は徐々に危険なレベルまで白熱しだした」という訳。原文無視とまではいかないけど、読みやすさ重視の結構な意訳。

(*2)
 話によると、エラヨウ使いのうちの1人を問い詰めたところ、相手はオンラインでも何度も議題に上がっているガチコンボや共謀の犠牲になったことが前にあり、今年は黙って犠牲者側に回るつもりはない、と言っていたらしい。

原文:
 Word was that one of the two had been confronted, and said that in years past, he was subject to the collusion and hard combos that had been talked about online, and this year, he wasn't going to be a victim.


 訳自体はそこまで間違っていないと思うけど日本語がイマイチかもしれないと思った箇所。原文に引きずられた、と言えばいいのかな。

 「Collusion」は「陰謀」や「策略」などに当たる言葉で、EDHの場合は、自分以外のプレイヤーが結託して敵対してくる状態を指していると思われる。麻雀で言う「コンビ打ち」と言えばいいんだろうか。

 自分で訳しておいてなんだけど「共謀」はちょっと固いというか不自然というか……このコンビ打ち的なずるい行動について、EDHを遊ばれている方々のあいだで一般的に使われている呼称があれば知りたいところ。

(*3)
 僕が思うに、ウィザーズは彼らが表立って認めている以上にこのゲームについて深く理解しているんじゃないだろうか。

原文:
 I think Wizards has a deeper understanding of things than they let on.


 このあとの文章を何度も読み返したんだけど、結局この「Things」が何を指しているのかがよく分からなかった。「EDHに関する何か」だとは思うんだけど……なんなんだろう。

 「EDHがカジュアルなゲームであり競技には絶対的に向いてない」ということ? それとも「EDHを競技的に成功させるためにはどうすればよいか」ということ? 結局は「このゲーム」と訳したけど、そんな曖昧な単語で済ませている時点でやっぱり内容を理解したとは言えない気もする。

(*4)
 彼らは統率者戦という環境に対する初手は構築済みを通してだった。それがフォーマットにもたらしたものは新しいカードと新規参入者をたくさん生み出すのに役立ったということだけでなく、同時に確実にこのフォーマットへ競技性をもたらすために打てる最善手を打ってきたのではないか、というのが僕の懸案だった。

原文:
 Their first foray into Commander through the Pre-Cons not only infuses the format with new toys and has served to turn tons of new players on to the format, but it nails the best way to inject competition as far as I'm concerned.


 訳に関しては、色々と難しい中で特に「it nails the best way to inject competition」が分からない。

 「nail」をどう訳せばいいのかにかかっている(ちなみに、日本では「つめ」という意味で有名だけど、実際は「名詞:釘、動詞:くぎづけにする」という意味のほうが一般的だと思う)。俗語では「うまいことやる、成功する」という意味もあるらしいので、それかなあ、と思って訳してみた。

 んで、そうだとすると「best way(最適な方法、最も良い方法)」を「nail(上手いこと成功させる)」ということになる。つまり「最適な方法を成功させる」ということになり意味が通らない。

 ここは、この記事の中でも特に肝となる部分に思われたのでギリギリまで悩みまくった。

(*5)
 それは例えば構築済みを手渡され他のプレイヤーも構築済みを持っているようなバランスのとれた環境で戦うことだ。

原文:
 Something about being handed a pre-constructed product and being in a balanced environment with other pre-cons levels the field.


 最後の「a balanced environment with other pre-cons levels the field」で悩んだ。語順そのままに訳していくと「バランスのとれた環境 + ~によって + 他の構築済みデッキ + 平らにならす/平均化される + 場が」という感じかな。

 「pre-cons」が「pre-constructed decks」で合ってると思うんだけど、「全員が構築済みデッキを使えばバランスがとれるよ!」って主張はありえないような……つまり訳が間違っている気がする。だけどそうとしか解釈できない……けどおかしい気がして困った。最終的には原文準拠で。

(*6)
 2日間で5時間しか睡眠をとってないと細かいミスは増えるし、マッドサイエンティストみたいに狂ったような笑い声を上げ続けることになる。

原文:
 Five hours of sleep in two days will make you miss things the little things, like (for example) grossly overextending while cackling like a mad scientist.


 ここらを訳すときは、訳す側も体力と気力と時間がもう限界だったので、ノリと勢いでそれらしく仕上げただけになってる。あらためてゆっくり考えてみる。

 直訳するなら……「2日間で5時間の睡眠はあなたに細かい事柄を失わせる。例えば、マッドサイエンティストのようにわめきたてているあいだにひどく限度を超えることなどである」となる。

 もちろんこのままじゃまったく意味が分からない。

 まず間違いないのは「2日間で5時間しか寝てない。そんな状態だと……」で文章が始まっていること。つまり睡眠時間が足りないときに起き得ることが後に続くはず。

 睡眠時間が足りないと「make you miss things the little things」らしい。この「miss」は「失わせる」という意味ではなく、日本語のミスと同じく「が上手くできない、失敗する」という意味だと思う。

 それはいいんだけど「things the little things が上手くいかなくなる」って何なの? なんでここに2つの things が出てくるのかがよく分からない。「make you miss the little things」じゃダメなんだろうか。

 それに続くコンマ以降の文章も悩ましい。

 とりあえず「例えば~」で始まってることは間違いないんだけど、何の例を挙げているのかがよく分からない。「睡眠時間が足りないときにミスしやすい『何か』」の例なのか「睡眠時間が足りないときに『起こしやすいミス』」の例なのか。

 どっちでも同じじゃん、って言われそうだけど、日本語に訳そうとするとこれで色々違ってくる。例えばこれの前半部分が「2日間で5時間しか寝てないと、皿洗いでお皿を割ってしまう回数が増える」だったとすると「ミスしやすい『何か』」は「皿洗い」であり、「起こしやすいミス」は「皿を割ること」になる。

 話をズレた。閑話休題。

 後半は「Like [A] while [B]」という文章で、これが前半で述べている何かの例となる。これも捕らえ方としては2通りあって……

  (Like [A]) while [B]

  Like ([A] while [B])

 のいずれか。前者は「例えばひどくやりすぎてしまうことが例として挙げられる。その最中、僕はマッドサイエンティストみたいにわめきたてていた」となる。後者の場合「例えば、マッドサイエンティストみたいにわめきたてつつひどく何かをやりすぎること」となる。

 多分、この文章は何か特別な言い回しかことわざを用いていて、そのまま訳そうとしても意味が通じないんだと思う。つまり、負けを認めるので誰か助けてください。お願いします。


(*7)
 僕らがタクシー代に費やしたお金はチップを入れても40ドルほどだ。もしくは5杯分のLong Island Iced Teaだけの価値はある。

原文:
 Pretty sure our taxi in was about $40 after tip. Or five Long Island Iced Teas' worth.


 投げっぱなし訳。今あらためて読んでみると「レンタカーを借りるくらいなら、その同じお金で Long Island Iced Tea を5杯飲んだほうがいい」ってことなんだと思う。
(*8)
 ランジェリーそのものな衣装もね。僕はアニメの大ファンってわけじゃないけど、見かけたいくつかコスプレは神に誓って素晴らしいものだったよ。

原文:
 And then there's the lingerie. I'm not a huge anime fan, but god bless any IP that makes some of the sights we saw socially acceptable.


 まずはあえて直訳してみると「そしてさらにそこにはランジェリーがあった。僕は大のアニメファンではない。しかし、神の祝福あれ、どんなIPだろうと僕たちの見た風景のいくつかを社会的に許容可能にしてくれるなら」という感じ……違うな。

 直訳としても「そしてさらにそこにはランジェリーがあった。僕は大のアニメファンではない。しかし、神の祝福あれ、どんなIPだろうと僕らが見た風景のいくつかを許容可能にしてくれるIPであるならば」かな。

 まあ、要するにここで出てくる IP が何か分からないとどうしようもないという話。まさか Internet Protocol じゃないよな、これ。ここも正直お手上げなので、誰か優しい人に教えを請いたい。

 いわゆる注釈は(註)として文中に入れてある。翻訳に自信がない箇所はアスタリスクで示し、まとめて文末に置くことにした。また原文で「Commander」となっている箇所は、迷ったけど結局は「EDH」ではなく「統率者戦」と訳すことにした。著者の主張的にそっちのほうが正しそうだから(11月26日補記:各種指摘を受けた箇所を修正)

序文

 Cassidy McAuliffeはフォーラムの常連だ(フォーラムでは、DJ Catchemと名乗っている)。彼はこのフォーマットの真のファンだ。9月の殺人的なスケジュールに根を上げた私が助けを求めたところ、彼はもろ手をあげてチャンスに飛びついてきた。先週の金曜は私の誕生日だったんだが、これはなかなか素晴らしい誕生日プレゼントじゃないだろうか。
                                               --- Sheldon

【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間見たEDHの闇と光(ただしエラヨウ、てめえはダメだ)/Embracing The Chaos - Cheap Whiskey, Old-School Conan, And Erayo【SCG】
2011年09月21日
By Cassidy McAuliffe
元記事:

 テーブルの対面の相手はにやつきながら目を見開き、あまりにそわそわしているので間違って大アリの巣の上にでも腰を下ろしたのかと心配になるほどだった。先攻後攻を決めるダイスロールに勝った相手は迷わずに手札をキープし、こう言った。

「《島/Island》、《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》、《水蓮の花びら/Lotus Petal》、《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を張ってから《メムナイト/Memnite》。エラヨウを反転させていいかな」

 ここはFerris Buellerの言葉を借りよう。

「こういうときだよ、Cassがブチ切れるのは」

まず、はじめに

 僕は典型的な30代半ばのカジュアルマジックプレイヤーだ。遊び始めたのは高校生の頃で、当時のマジックはリバイスドの時代だった。

 Al Gore(註)はまだインターネットを発明しておらず、僕らの小さな町から外部へ開いた窓は雑誌のScrye(註)しかなかった。

 地元のゲームショップには「2対1交換」という交換ルールが存在していた。2枚の《生命の色/Lifelace》を手放せば《Demonic Hordes》が手に入るという具合だった(当時のトレードと言えば「このつまんない《Tundra》数枚とその《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》を取り替えてよ」ってな感じだったけど、まあ、それはまた別の機会に)

 そんな中、僕らも徐々に気づきだした。最終的には、古参プレイヤーが地元の週末に行われたトーナメントで《Black Lotus》を手放そうしているのに出くわしたとき、トレードを成立させるべくあらゆる手を尽くした。

 僕は手に入れたばかりのそのカードをデッキに放り込み、さっそく次の日の試合でテーブルにそれを叩きつけた。そして2ターン目に《水の精霊/Water Elemental》を呼び出したのさ!

 ……ああ、うん。子供ってそういうところあるよね。

 まあ、それはさておき、その後の「とあるマジックプレイヤーの辿った悲しきゲーム人生」を駆け足に紹介しよう。僕はヴィンテージに出会ってからしばらくしてカードを全て売り払いゲームから引退した。その後、レガシーに出会いしばらくしてカードを全て売り払いゲームから引退した。その後、フレイデーナイトマジックに出会い、スタンダードを少し遊び、しばらくしてカードを全て売り払い、プレリリースに出会いしばらくしてカードを全て売り払った。

 その通り、よくあることさ。

  そんな中、僕が出合ったのが「EDH」(註)と呼ばれるフォーマットだった。そして僕の中の「カジュアルゲーマー」が今再び目覚めた� ��さ。前々から遊びたいと願っていたマジックはまさにこれだった。

 デカいクリーチャーと派手な呪文にこれほどまでに胸をときめかせたのは、1994年に地元のトーナメントで《サルディアの巨像/Colossus of Sardia》に《賦活/Instill Energy》をエンチャントして勝ったとき以来だ。

 というわけで現在の話。

 僕の良き友人であるChadの独身最後の自由な時間をどうやって有効活用すべきかを、花婿の介添え人であるPatrickと僕は必死に考えていた。この最後の時間を盛大に祝ってあげるために何がしてあげられるんだろう。

 3人でGen Con 2011(註)へ行くしかない。そう思ったんだ。

 結局のところ、他の子供たちがアルコールとパーティに明け暮れていた中、僕らはもっとカッコいいことを、そう、一晩中、HeroQuest(註)のキャンペーンをこなすような少年時代を送ったいたんだ。(余談。妻はいまだに僕ら2人の間に子供が出来たことを奇跡だと思っている)

 僕は航空券を購入し、計画を実行に移すことになった。

(註) Al Gore
 アメリカの元副大統領、アル・ゴアのこと。Wikipediaによると彼の企画である「情報スーパーハイウェイ構想」によってアメリカのインターネットは急激に発達したらしい。
 参照:

(註) 雑誌のScrye
 「Scrye」という名のトレーディングカードゲーム専門誌のこと。1994年から2009年にかけて刊行されていた。Wikipediaによると最も長く続いたTCG専門誌らしい。
 参照:

(註) 「EDH」
 エルダードラゴンハイランダーの略。1枚の伝説のクリーチャーと99枚のカードでデッキを組むが、同じカードは1枚まで。他にも色々と特殊なルールが存在する。

(註) Gen Con 2011
 Gen Conは世界でも最大級のゲームコンベンション。ここで言及されているのは2003年からインディアナ州インディアナポリスで開催されているGen Con Indy。
 公式サイト:

(註) HeroQuest
 Hero QuestではなくHeroQuestで正しいらしい。ロールプレイング的要素を持ったボードゲーム。2009年にロールプレイングゲーム版も出てる。
 参照:

旅のメモ(その1)

 デルタ航空は選ばないこと。コネチカット州にあるブラッドリー国際空港とインディアナポリスの距離は、834マイル。僕らが帰国便の乗り継ぎ先を変更する前のブラッドリー国際空港とアトランタの距離は、967マイル。(註)

 度重なる遅延とキャンセルされたフライトの代替としてアップグレードをしてくれと交渉したとき、受付の係員は僕の顔面を殴りつけてから財布を盗んでった。

 本当だよ。(註)

(註) デルタ航空は選ばないこと
 アメリカの地理に明るくないのでここの何が問題なのかよく分からない。自分で乗り継ぎ先を探したほうが効率が良かった、って話なんだろうか。

(註) 本当だよ
 この話が本当かどうかは分からないけど、少なくとも原文にはそう書いてある。

Gen Conに全てを賭ける男たち

 Patrickと僕(と、この2人ほどではないにしてもChadも)根っこからの統率者戦プレイヤーなので、イベントで開催されている統率者戦の試合をチェックしてみた。

 フォーラムでは悪い噂が流れていた。「EDHマフィア」どもがGen Conのトーナメントへと向かったというのだ。彼らはカジュアルを愛するプレイヤーたちを統率者戦のトーナメントで叩き潰すつもりなのだと。

 コンボデッキが会場を支配するってことだ。

 僕らは最悪を危惧した。Patrickは「Hate the Haters!(嫌われ者に嫌われろ)」デッキを作ろうと考え始めた。それは赤単色で《赤霊破/Red Elemental Blast》やその同類と《沸騰/Boil》を詰め込んだものだった。

 僕はそれよりは前向きかつ楽観的で、恐怖に負けてデッキを崩すような真似はしないことにした。

「きっと大丈夫だよ」と僕は言ったのさ(もしかしたら他にも「どんな問題が起きるってんだ?」とか「ばらけて様子を見よう」とか言ったかもしれない)。

 僕はGen Conをこのフォーマットをより広い視野でとらえるためのバロメーターにしようと考えた。より大きな舞台における統率者戦を体験することで、このフォーマットが競技的なプレイと上手く折り合えるのかを見極めるつもりだったんだ。

 結果としては、Patrickの目的であった「ウイスキーでも飲もうぜ!」のほうがマシだったかもしれない。

Indianapolisについて(その1)

 P.F.Chang(註)のバーテンダーは最高のLong Island Iced Tea(註)を作ってくれる。僕とPatrickの2人で5杯は頼んだ(Patrickが4杯分を担当し、別段それを苦にした様子もなかった)。

 ああ、それと野菜チャーハンにオレンジチキンが乗った料理も注文したな。この旅行で最高の料理だったよ。

(編註:明らかに彼らはHarry & Izzy's(註)へ立ち寄りそびれている)

(註) P.F.Chang
 アメリカ全土に店舗のある中華料理屋のチェーン店。公式サイトのメニューを見たら月桂冠などの日本酒も置いてるらしい(店舗にもよるだろうけど)。
 参照:

(註) Long Island Iced Tea
 Teaという名だけど、ウォッカやジンなどを用いて作るカクテルの一種、つまりお酒。一般的に紅茶は一切含まれていない。
 参照:

(註) Harry & Izzy's
 インディアナポリスにあるアメリカンレストラン。地元ではなかなか有名な店らしい。
 参照:

競技的プレイにおける難題

 統率者戦のプレイヤーたちは皆飽き飽きしていた。僕らは自分たちのデカぶつと派手な呪文をカウンターに怯えずにプレイしたかった。僕らは何度も繰り返される《精神隷属器/Mindslaver》や《アーマゲドン/Armageddon》から解放された世界を望んだ。

 僕らはカジュアルプレイヤーであり、僕らは死んでも自身の権利を守る。

 巷の統率者戦スレを軽くのぞいて見てくれ。議論は何百回と繰り返されている。「トーナメントでプレイしたら《パリンクロン/Palinchron》が《High Tide》しやがった!」的な書き込みとそれに対する「トーナメントでプレイしたのが間違いだね」という返信がこれでもかと繰り返されている。

 統率者戦はカジュアルフォーマットであり競技的な環境にはそぐわない、というのが皆の共通認識だ。賞品を用意するや否や、このフォーマットの神髄はないがしろにされ、それが再び取り戻されることはない。

 とはいえ僕らはなかなか諦めが悪い。だから僕らは何度でも挑戦するんだ。誰かがこのトーナメントうんぬんの議論をスレッドに投下し続けなければいけないんだ。

 結論として、僕はGen Conに普段どおりのデッキを持ちこむつもりだ。どうやってかはまだ分からないけど、僕はそこで最高の統率者戦を体験してきてやるさ。

 というわけで、今回の旅行が始まるに当たって、僕は《血編み髪のクレシュ/Kresh the Bloodbraided》、《大祖始/Progenitus》、《夢見るものインテット/Intet, the Dreamer》そして《オルゾフの御曹子、テイサ/Teysa, Orzhov Scion》をカバンに詰め込んで南へ……西寄りの南へ向かったのさ。

ゲートから転がり出て

 フライトを捕まえるためにマサチューセッツで朝の4時に目覚めた僕らは、木曜の午後にはインディアナポリスにいた。予定ではまずホテルへ向かい、次にバッジ(註)とイベントチケットを回収するためにダウンタウンへ行き、さらにネットで知り合った統率者戦プレイヤーたちと夕飯を食べることになっていた。

(註) バッジ
 Gen Conの参加者はバッジをつける必要がある。このバッジがないとホールやらショーやらに出入り出来ない。特定のイベントではチケットを買うためにもバッジが必要となる。
 参照:

 僕は午後11時から始まる統率者戦・スイストーナメントに参加する気満々だった。4人で1ポッドの3ラウンド制だ。ポッドで勝ちぬくと5ポイントもらえる。2位で3ポイント、3位で2ポイント、最下位は1ポイントだ。ペアリングは成績に従って行われ、最終的に最も高いポイント保持者が賞品を得られる。

 僕はクレシュを相棒に選び、最初のポッドは最高だった。誰も速攻で何かを決めに行く様子はなく、各プレイヤーに派手な見せ場があった。僕はその試合で《数多のラフィーク/Rafiq of the Many》を排除すべく《Berserk》した《禿鷹ゾンビ/Vulturous Zombie》をアタックさせたあとに《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》を使うプレイヤーに負けて2位に終わった。

 皆が試合を楽しんだ。

 だけど僕らは単に運が良かっただけだった。別のポッドでは《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を操るプレイヤーによってあっという間にゲームが制圧されていた。

 彼のデッキは最初の数ターンのうちに《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》を反転させることが可能で、その後《秘儀の研究室/Arcane Laboratory》によって卓の全員相手にロックを決める。そして《メムナイト/Memnite》による緩慢な死が他の3人にもたらされるまでの約80ターンが続く。

 さらに悪いことに、トーナメントではよくあることではあるけど、エラヨウを用いるプレイヤーがもう1人いたことだ。

 僕らは大半のプレイヤーが集まっている端のテーブルへ向かった。そこではすでに上記のデッキに関する議論が声高に始まっていた。議論は徐々に危険なレベルまで白熱しだした。何人かのプレイヤーは、このまま我慢するくらいなら暴力行為にすら訴えそうな勢いだった。 元々隠そうともしていなかった不平不満がそこでぶちまけられていた。何人かのプレイヤーは、このまま我慢するくらいなら暴力行為にすら訴えそうな勢いだった(*1)。プレイヤーたちはエラヨウ使いたちがいかにこのフォーマットを台無しにしているかについて不満を述べていた。


 話によると、エラヨウ使いのうちの1人を問い詰めたところ、相手はオンラインでも何度も議題に上がっているガチコンボや共謀の犠牲になったことが前にあり、今年は黙って犠牲者側に回るつもりはない、と言っていたらしい(*2)

 もちろんこの説明に納得したプレイヤーはいなかった。

 僕はPatrickを探した。彼は参加したポッドで《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》をプレイしていた。

 《雑食のハイドラ/Hydra Omnivore》のコントロールを得た彼は、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》と《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》と《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》によるアンタップを用いて、速やかに100点のダメージを生み出していた。

 彼に上記の話をしたところ「当たったら負けるしかないな」とのことだった。

 そうしてペアリングは進んでいった。

 2ラウンド目でPatrickが《結界師ズアー/Zur the Enchanter》相手に投了したあと、寝ぼけた目をしたChadを引き連れて朝の3時にホテルへと戻っていった(ちなみにChadは、上記の残念な状況をすでに予想していたため、それを避けて基本セット2012のドラフトをハシゴしていた)。

 僕は嵐のただ中で席につき、そこで父親とその2人の息子たちとプレイすることになった。

 これまた楽しい試合だった。

 またしてもテーブルに叩きつけられた《禿鷹ゾンビ/Vulturous Zombie》は巨大に膨れ上がった。だけどそれでも僕は追いつめられる側だった。反対側には《寛大なるゼドルー/Zedruu the Greathearted》がいて、彼の兄弟の《ボガートの汁婆/Wort, Boggart Auntie》に率いられたゴブリンの軍団を全て《手綱/Reins of Power》で奪った彼は僕の頭に一撃を振り下ろした。

 僕らは大笑いしながら楽しい時間を過ごしたんだ。だけど試合が終わったとき、また別の卓がエラヨウ使いたちによってあっという間に制圧されていたことを僕らは知ることとなった。この時点ですでに次の試合の組み合わせは壁に張り出されていたからだ。

 最終ラウンドのペアリングに僕は入っていた。対戦相手は以下の通り。《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》と《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》……そしてもう1人の《上位の空民、エラヨウ/Erayo, Soratami Ascendant》。

 展開は予想通り。1ターン目に片方のエラヨウ使いが場をロックした。

 犠牲者うんぬんについて述べてたプレイヤーだ。

 念のために記しておこう。彼の目の輝きと他のデッキを金魚みたいに無力化するのに成功したときの喜びようを見て、こいつの主張は半分も信じられないと思った。こいつはこのデッキを心底楽しんでいる。

 その後、なんとかかんとかもう1人のエラヨウ使いが自身のエラヨウを場に出して反転させ、1人目のプレイヤーの《Erayo's Essence / エラヨウの本質》を破壊することに成功した。

 1人目のプレイヤーは再度パーツを集めて自身のジェネラルを呼び出そうとした(それも次のターンに)。しかしそれは2人目のプレイヤーによって打ち消された。

 そうすると1人目のプレイヤーはアンタップしたあとに《未来予知/Future Sight》と《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》、さらに《エーテリウムの彫刻家/Etherium Sculptor》を場に出してから自身のデッキを引き切り、対戦相手である僕ら全員を《天才のひらめき/Stroke of Genius》でライブラリアウトさせた。

 なかなか興味深かったよ。「麻酔がいまいち効いてなかったみたいで、外科医が僕の胆のうを摘出するのがそのまま感じられた」ってなもんだ。僕は何枚かの土地とジェネラルを場に出してはいたけど、何かを出来たわけじゃないし、出来るとも思ってなかった。

 その試合の一番の見せ場は、勝者であるエラヨウ使いが他の3人がどの順番に負けたのかを決める場面だった。実に簡単な決め方だったよ。

エラヨウ野郎
「さて、公平にやろうか。君たち3人をそれぞれ僕のデッキのカード3枚に割り当てて、僕がそれをランダム引きする。最初に引かれた人が最初に負けたプレイヤー、その次が次に負けたプレイヤーってことで」

 彼はそう言うと彼のデッキの上から3枚のカードを僕らに見せることなく手の中に入れた。そしてそれらをテーブルの下でシャッフルし始めた。別の卓に行っていたもう1人のエラヨウ使いはこの時点で卓に帰って来た。

 彼は「どのカードが誰なのか教えてくれないのか?」と尋ねた。エラヨウ野郎はこの言葉を無視して手元のカードを眺め、そのうちの1枚を表向きにし、僕を見た。

エラヨウ野郎
「おおっと、残念。こいつは君だね」

 僕はそのあと、傍観者であろうとしていた。

 僕は黙って席に座りながら静かに心の中で計算をしていた。暴力行為を理由に警察に捕まる前にこの州から飛行機で出立するために必要な時間の使い道だ。そうしているうちに最終順位が発表された。

 エラヨウが1位、エラヨウが2位。

 判決は下された。

 僕の疑問は果たして解を得られた。順位に応じた賞品を提示せよ、さすれば統率者戦は制限されたヴィンテージと同様のものとなるだろう。

 結局、どこまで行っても水と油さ。

あまり意味のない余談

・コナン・ザ・バーバリアンの映画(1982年版)のチケット:5.50ドル

・ポップコーン、ダイエットペプシ、タマレ(註)1箱:12.50ドル

・ 映画館で2人の客たちが片方のしゃべり声がデカいという理由でケンカを始めたのが偶然にもコナンが掘っ立て小屋で悪魔に姿を変えた魔女と戦うシーンとシンクロし、さらに片方が警備員に連れ去られながらも大声で不当な扱いだとわめいている瞬間がこれまた偶然にもコナンが魔女を炎の中に放り込むクライマックスとシンクロするのを目撃した瞬間:?ドル

(息継ぎ)

 払った金だけの価値はあったよ。これは作り話じゃない。っていうか、でっちあげようったって自力じゃ思いつかないよ、こんな話。

美味しいパンケーキのおかげで全てを許せるか?

 現地時間で朝の6時。もうこれで26時間ぶっ通しで起きていることになる。だけど僕の眼は冴えていた。僕は気分転換に通りの先にあるSteak 'N Shakeで朝食をとることにした。

 ひどい味のコーヒーを2杯、なかなかのブルーベリーパンケーキを一山、さらに素晴らしく美味いハッシュドポテトをたいらげた僕は、フォーマット全体に対する疑念を再確認していた。

 競技的なサポートは常に構築フォーマットの品質保証となってきた。それが無ければフォーマットはただしなびて死ぬしかない。

 統率者戦に関しては、統率者戦の構築済みデッキのリリースによってウィザーズのサポートが与えられたかに見える。だけどその代償は? もしコアなプレイヤーがその行きつく先を望んでいないのなら、この環境が長く生き永らえることにどれほどの意味があるんだ?

 僕らが遊んでいるフォーマットは本質的に競技的なプレイに向いておらず、またカード市場にも ほとんど影響を与えないフォーマットだ。

 ここ最近、このフォーマットにおける5色について議論されていたあれやこれやについて、ようやく分かりかけてきた気がした僕は、5-Colorフォーマット(註)について議論されていたあれやこれやについてがようやく実感できるようになった僕は、ウェイトレスに代金を支払ってからひと眠りするために通りを戻っていった。

(註) 5-Colorフォーマット
 5色それぞれのカードが一定枚数入っていないといけないという特殊な非公式フォーマット。なおMTG Wikiでは「5-Color Magic」という項目名で紹介されている。

旅のメモ(その2)

 もし君が持ち運ぶ荷物にあまり気を遣わないタイプなら今後はそうしたほうがいい。

 Patrickはポーカーチップを1ケース持っていった(金属製のケースに入っているようなアレだ)。帰りの便では、これはChadのトランクに収まることとなった。

 空港の持ち物チェックに差し掛かったとき、Patrickが振り向いて僕に言った。「あれがチェックに引っ掛かるかどうか賭けないか?」

 賭けに乗らなくて良かったよ。

 あれ以来、Chadはゴム手袋の鳴る音(註)で見た目にも明らかに怯えるようになった。

(註) ゴム手袋の鳴る音
 アメリカの空港の警備員と言えば、金属探知機とゴム手袋がトレードマークらしい。日本の空港だと手袋は布だった気がするけど。

スイートスポット

 僕が思うに、ウィザーズは彼らが表立って認めている以上にこのゲームについて深く理解しているんじゃないだろうか(*3)

 彼らは統率者戦という環境に対する初手は構築済みを通してだった。それがフォーマットにもたらしたものは新しいカードと新規参入者をたくさん生み出すのに役立ったということだけでなく、同時に確実にこのフォーマットへ競技性をもたらすために打てる最善手を打ってきたのではないか、というのが僕の懸案だった
 彼らは統率者戦という環境に対するアプローチはまず構築済みを通してだった。それがフォーマットにもたらしたものは新しいカードとたくさんの新規参入者だけではない、というのが僕の個人的な見解だ。それは、このフォーマットに競技性を導入するよ、という通告だったのではないだろうか(*4)

 さて、土曜日、大した睡眠がとれなかっただけでなく最悪なことに通りの角にあるコンビニが実は酒屋だとPatrickが発見してしまった夜の次の日、僕らは統率者戦・シールド戦のイベントの為にコンベンションセンターへと向かっていた。

 参考までにシールド戦の形式について説明しておこう。1つのポッドに4人のプレイヤーが参加し、それぞれに統率者戦の構築済みが1つずつ配られ、1人が勝ち残るまで試合を� �ける。君が倒すことに成功したプレイヤー1人につき3つの基本セット2012のパックが進呈される。

 僕ら3人は登録を済ませ、すぐ後ろにいた4人目のプレイヤーが記入し、4人で試合することとなった。僕は《擬態の原形質/The Mimeoplasm》と一緒に席についた。Patrickは《巨大なるカーリア/Kaalia of the Vast》と、Chadは《胞子の教祖、ゲイヴ/Ghave, Guru of Spores》と、そして4人目のプレイヤーは《寛大なるゼドルー/Zedruu the Greathearted》と一緒だった。

 僕らはすぐに「ゆっくり楽しもうぜ」というスタンスに落ち着いた。地元ではマリガンに制限はつけていなかった。皆がゲームに参加できるように、というのが目的だ。4人目のプレイヤーもこれに賛同してくれた。彼の地元でもそれが一般的だと言っていた。

 僕らのあいだにはすぐにジョークと笑いがあふれた。全員がゆっくりと自分の陣営を築きだした。僕は自分の手札を眺め、そのとき天啓のごとく気づいたんだ。

 これだ! これが「競技的な統率者戦」なんだ!

 それは例えば構築済みを手渡され他のプレイヤーも構築済みを持っているようなバランスのとれた環境で戦うことだ(*5)

 僕は普段のカジュアルな自分とはまるで反対のプレイングを楽しんでいる自� �を見出した。

 Patrickが5ターン目に《巨大なるカーリア/Kaalia of the Vast》を唱えようとするのに対し、僕は喜んで《呪文丸め/Spell Crumple》を見せつけた。《絞り取る悪魔/Extractor Demon》と《トロールの苦行者/Troll Ascetic》を墓地に落としたあと、僕は《擬態の原形質/The Mimeoplasm》を戦場に登場させ、無防備だったChadを僕は無慈悲に自身のジェネラルで殴りつけた。

 妨害をかいくぐる普段とは違い、今回は僕が最初に場の脅威を演じていた。

 この試合の最も素晴らしかった点は、僕以外も全員がゲームに参加できていたことだ。

 何らかの理由で、食うか食われるかの非情なプレイングも十分に受け入れられていた。それでもなお皆が戦場に関与することが出来た。誰も虐げられているとは感じなかった。誰も不公平に扱われているとは感じなかった。

 それはまるでシールド戦の最も良いところと統率者戦が組み合わさったようだった。誰もがよくまとまったデッキでデカブツや派手な呪文を唱えあいつつも、誰も1人遊びに興じてしまうようなこともなかった。

 賞品なんて� �係なかった。イベントが終了するその瞬間まで、間違いなくみんな賞品のことを忘れてたと思う。

 素晴らしいバランスだった。カジュアルな統率者戦を大好きなプレイヤーたちにもぜひ一度構築済みで対戦してみて欲しい。どれほどそれを薦めたいか、ここでは言い尽くせないほどだ。

 とはいえ、変わらないものもある。

 僕は速攻で先陣を切り、戦場に真っ先にとんでもない脅威を叩きつけることに成功したが、僕の《擬態の原形質/The Mimeoplasm》は遠からず戦場から追放され、気づいたら僕は馬鹿デカい《胞子の教祖、ゲイヴ/Ghave, Guru of Spores》に殴られていた。

 オーケイ、分かった。例の法則はまだ有効らしい。

 2日間で5時間しか睡眠をとってないと細かいミスは増えるし、マッドサイエンティストみたいに狂ったような笑い声を上げ続けることになる マッドサイエンティストみたいに狂ったような笑い声をぶっ倒れるまで上げ続けることになる(*6)

 まあ、しょうがないよね。

Indianapolisについて(その2)

 レンタカーはいらない。実のところGen Conに関連した施設は全て4ブロック以内の範囲に収まっている。空港からダウンタウンまでは1人頭8ドルの往復シャトルバスが20分おきに出てる。

 僕らがタクシー代に費やしたお金はチップを入れても40ドルほどだ。もしくは5杯分のLong Island Iced Teaだけの価値はある(*7)

学んだ教訓について

 帰りのデルタ航空のフライトで、機内後方のトイレとエンジンの間にある通路側の席に身を横たえながら、僕はiPodでIron Maidenを流しつつ鼻栓をした。そして週末のことを思い返していた。

■ 統率者戦はカジュアルなフォーマットだ

 この点に疑いはない。カジュアルってそもそもなんだという議論はこの際脇に置いておく。このフォーマットは、相互作用を持ちつつ互いのアクションに付き合ってくれるデッキを全てのプレイヤーたちが持ち寄ったときに最高の輝きを見せる。

 デッキの目的が「プレイする」ことであり「勝つため」ではないときに、だ。

 もちろんガチの対戦や1対1のトーナメントが好きなプレイヤーがいることは理解している。だけど呪文を1つでも唱える前に試合から締め出されてしまうようなゲームを僕は到底楽しいとは思えないんだ。

 それは僕にとって統率者戦じゃない。構築のスイスラウンドで起きたことに対する皆の反応を見る限り、僕はこの考えが多数派だと信じる。

■ 賞品とは9割の確率で純粋に混じりッ気なしに「悪」だ


 こいつらのせいで僕らは楽しい時間を過ごせないんだ。もちろん代替的な勝利条件(例えばポイントシステム)やコントロールの効いた環境(例えば全員が構築済みデッキ)が用いられる場合はその限りじゃない。

■ ルールチームの言うことは大部分において正しい

 驚いたのは、この長い週末の中で会話した統率者戦プレイヤーの中で「公式ルール」や「禁止カード」という単語について言及したプレイヤーがほぼゼロだったことだ。

 何人かのプレイヤーは何枚かのカードの禁止に(もしくは何枚かのカードが禁止されていないことに)いらついていたし、いつだってルールを変えて欲しいとか変えて欲しくないとかいう声はある(君のことを言ってるんだよ、「Tuck」(註)!)。

 何にせよ、ルールチームは本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思っている。見事な基本ルールを構築し、それを大多数へ提供し、さらにはこう付けくわえてくれた。「これはカジュアルなんだよ! 納得いかないなら好きに変えてくれ!」

 素晴ら しいバランスだ。

 まだまだ禁止されていないパワーカードはあるし、プレイヤーたちにこれらから興味深い相互作用やシナジーを生み出そうとしている。同時に、これらに対抗する手段を生み出そうと苦心しているプレイヤーたちのおかげでバランスは保たれている。

 20個の毒カウンターを乗せようと頑張るプレイヤーもいるし、通常ダメージに頼らないプレイヤーもいる。正直、誰かが無理やり制限を緩めようとしなくても統率者戦は十分に高い自由度を誇っているよ。

 上手く働いてる。

 だけど、お願いだ……エラヨウだけは勘弁してくれ!

 こいつだけは生かしておいちゃいけない ( ゝω・)

(註) Tuck
 ちょっと自信がないけど、どうやらジェネラルを2回目以降に唱える際に2コストずつ「課税される(Tax)」ルールを指しているらしい。
 全然違った。コメントによる情報提供とネットでさらに検索して確認したところ、どうやらTuckルールというのは「ジェネラルをライブラリに戻せる」ルールらしい。

 例えばネットの書き込みでも「We continue to believe that tuck (putting a general into the library) is an acceptable part of the format」とか「So you know those cards that tuck the general at the bottom of the library?」という表現が散見された。

Gen Conのまとめ

■ その1
 時間やカレンダーのことなんて全部頭から消し去ること。インディアナポリスのコンベンションセンターは24時間年中無休で、時間に縛られずにイベントは開催されている。僕は日中に睡眠をとり、朝の4時に基本セット2012のドラフトに参加していた。

■ その2
 Gen Conのイベントは事前に予約しておくこと。そしてチケットは前売り券を入手しておくこと。チケット売り場で2時間待たされてしまってイベントに参加できなかったというような「怖い話」をいくつも聞いたよ。

■ その3
 TGGホールだけにとらわれず、他のイベントに無理やりにも目を向けること。他にも映画やコンサート(僕らはNinja Gaiden(註)のテーマを演奏しているドラマーたちを見かけた。
 その後ろでは巨大なスクリーンで実際にゲームを猛スピードで遊んでるのが映し出されていた)、ボードゲームの広場、クイズ大会、名高い「True Dungeon」……さらにはロックバンドやDJ HeroやDance Centralが巨大なスクリーンに映し出されている「Rave」な部屋まであった。
 そこでは照明が落とされ、ライトアップされたステージと大音響の音楽、ロックスターがエナジードリンクを配って歩いてた。なかなかのものだったよ。

■ その4
 バトルテック(註)のシミュレーターを体験すること。このゲームのファンじゃなくても、密閉されたコクピットで半時間のあいだ巨大ロボットを操縦するのは結構楽しいもんだよ。さらにボーナスとして君がゲームを終えた直後に話す内容を聞いた人が向ける恐怖のまなざしがついてくる。例えば「奴の頭にブチ込んでやろうと思ったのに右腕を吹っ飛ばせただけだったよ!」みたいなセリフだ。

■ その5
 コスプレを楽しむこと。ウィザーズのKen Nagle(註)のファイレクシア人風衣装はなかなかカッコ良かったし、他にも映画そのものなジャック・スパローとダースベーダーが広場の通路を歩いてるのを見るのも楽しい。ランジェリーそのものな衣装もね。僕はアニメの大ファンってわけじゃないけど、見かけたいくつかコスプレは神に誓って素晴らしいものだったよ 僕はアニメの大ファンってわけじゃないけど、見かけたいくつかコスプレをネットに公開してくれるネ申が現れてくれれば言うことなしだ(*8)

■ その6
 盗難についての噂は全部本当だ。不必要なものはカードやバインダーを含め、全てホテルの部屋に置いてくること。持ち歩くものは片時も手から離さないこと。

 最後に、僕にこれを書く機会をくれたSheldonに感謝!

                                               -Cassidy McAuliffe

(註) Ninja Gaiden
 英語版の「忍者龍剣伝」。アーケード版もある。発音は「ガイデン」ではなく「ゲェイデン」。

(註) バトルテック
 バトルメックと呼ばれるメカを操るゲーム。元はシミュレーション・ボードゲームで、そこからビデオゲームやロールプレイングゲームなどに派生したもの。ここでは業務用の大型筐体ゲームを指している。

(註) Ken Nagle
 フルネームはKenneth Nagle。モーニングタイドからデザイナーとして参加している。元々はシステム・ソフトウェア・エンジニア。
 参照:

※ 訳が難しかったり自信がなかったりした(*1)~(*8)については別記事にする。理由はDiaryNoteの文字数制限に引っ掛かったから。

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週もイニストラードの新カードたち。そろそろいつもの小ネタメインの Card of the Day が恋しくなってくる。ただ、おそらくだけどこの形式が終わったあとは公式 FAQ からの引用が続くとみている。FAQ に取り上げられそうなカードでも予想してみようかな(もちろん両面カードを除いて)。

余談2:月曜日 《天使の監視者/Angelic Overseer》

 「人間をコントロールしているかぎり呪禁を持つとともに破壊されない」というちょっと変わった天使。人間を守るのではなく、人間に守られる存在らしい。

 最初見たときは「まさか攻撃を受けそうになるたび、手近な人間を盾に使ってるんじゃ……」と不安になったけど、ルールテキストを読む限り、別段ダメージなどを人間に置き換えたりしているわけではないので一安心。さらにフレーバーテキストを読んで、その存在に納得すると同時に感動した。

英語:
 From mortal hope immortal power springs.

日本語訳:
 定命の者達の希望から不死の力が生まれる。


 人が存在することで生まれる希望やら何やらのポジティブな思いがこの天使に力を湧き起こさせるわけか。そして守るべき対象がいなくなると途端にやる気が失せる。なるほど。

余談3:火曜日 《戦場の霊/Battleground Geist》

 5マナ3/3飛行で他のスピリットを攻撃的に強化するメリット能力持ちのクリーチャー。良かった、《大気の精霊/Air Elemental》の上位互換じゃないんだ。

 ところで「Geist」って、それ単体で英単語なのか。どうしても「ポルターガイスト(Poltergeist)」という言葉の印象が強くて、単体で使われている気がしなかった。なお「Geist = 心、霊魂」などの意味があるらしい。

 そういえば「サムライエボリューション 桜国ガイスト」ってゲームが昔あったような。

余談4:水曜日 《モークラットのバンシー/Morkrut Banshee》

 戦場に出たとき、対象のクリーチャーを-4/-4できるバンシー。ただしバンシーの雄叫びは誰かが死んだときに発せられるものなので「このターンにいずれかのクリーチャーが死亡していた場合」という条件がついている。

 4/4というサイズはちょっと意外だった。個人的にバンシーというとやせ細った女性のイメージがある。ただイラストを見ると確かに随分と肉付きのよい見事なプロポーションを誇ってらっしゃるので「なるほど、4/4か」と思った。

 能力はフレイバー的には理解できるけど、実際のゲームでは味方がいないときに引いてしまって5マナ4/4バニラのまま戦場に出ざるを得ないときとかありそう。状況を選ばない《顔なしの解体者/Faceless Butcher》や《皮裂き/Skinrender》のほうが強い気がする。

余談5:木曜日 《ファルケンラスの匪賊/Falkenrath Marauders》

 小さくて素早い動きを見せて飛び回り、生物の血液を吸い上げてどんどん巨大化していく、といわれると、なんか吸血鬼というよりも他の生物を連想してしまう。B級ホラー映画のモンスターっぽい。吸血鬼というより蚊のような……美形というより奇形のような。

余談6:金曜日 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》

 白マナの出る《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》。《貴族の教主/Noble Hierarch》を思うと、レアとコモンにはどれほど差のあるものなのかをあらためて思い知らされる。部族効果を比べても「人間」の部分は同じだし、「ドルイド」と「モンク」だとごくわずかとはいえドルイドに分がある(多分)。

 まあ、でも違うセットで比べても仕方ないかもしれない。1人1人は弱くても力を合わせれば吸血鬼や狼男に立ち向かえるのがイニストラードの人間だから、1マナの人間には活躍の場があるだろう。多分、おそらく、もしかしたら。

余談7:よくある質問集

 おそらく発売後からはしばらく「よくある質問集(FAQ)」からの引用が続くと思われる。どんなカードが取り上げられるかな。

 白のカードから見てみる。無難なところでは《神聖なる報い/Divine Reckoning》とかありそう。ちなみに効果は「各プレイヤーは、自分がコントロールするクリーチャーを1体選ぶ。残りを破壊する」というもの。アクティブプレイヤーから選ぶという説明があるのではないかと予想。

 大穴としては《月皇ミケウス/Mikaeus, the Lunarch》かな。マナコストに(X)を含んでおりそのX分の+1/+1カウンターを持って出てくる。さらにタップして自身に乗っている+1/+1カウンターを取り除くことで味方全員に+1/+1カウンターを置ける。2つ目の能力で取り除くのは自身の能力で乗せたものに限らないという説明があるのではないかと予想。

 青のカードはFAQに載りそうなものが多い気がする(墓地のカードにフラッシュバックを与えるカードやコピーを生み出すカードなど)。だけど質問内容まで予想できるものとなると枚数が限られる。《好奇心/Curiosity》とかありそう。効果は「エンチャントされているクリーチャーがいずれかの対戦相手にダメージを与えるたび、あなたはカードを1枚引いてもよい」というもので、対戦相手のクリーチャーにつけた場合も条件を満たせば� ��けるという説明があるのではないかと予想。ただ再録カードなのでCard of the Dayには取り上げられないだろうな。

 どちらかというと《鏡狂の幻/Mirror-Mad Phantasm》でライブラリに「鏡狂の幻/Mirror-Mad Phantasm」という名のカードがなかった場合は全てのカードを墓地に置くとか、《縫い師の見習い/Stitcher's Apprentice》で解決時に本人しかいなかったら自身を生け贄に捧げないといけないとか、そんな感じのほうがありそう。

 黒のカードはあまり思いつかなかった。《ぬかるみの大口/Maw of the Mire》の「土地1つを対象とし、それを破壊する。あなたは4点のライフを得る」に対して、土地が破壊されなかった場合もライフは得る、もしくは土地を対象にとることができなくなり対象不適正で打ち消された場合はライフを得られない、のいずれかで取り上げられそう、というくらい。

 あとは《夜の恐怖/Night Terrors》で対象のプレイヤーの手札を公開させたあとの「あなたはその中の土地でないカードを1枚選ぶ。そのカードを追放する」について、土地でないカードがあれば必ずそれを追放しなければならない、という説明があるかもしれない、というくらいしか思いつかない。

 赤のカードだと《灰口の猟犬/Ashmouth Hound》のブロックするかされた状態になるたび「灰口の猟犬はそのクリーチャーに1点のダメージを与える」について、複数のクリーチャーをブロックしたり複数のクリーチャーにブロックされたりした場合、その複数のクリーチャー全てにダメージが与えられる、という説明がありそう。

 あと陰鬱関係の中でも《硫黄の流弾/Brimstone Volley》で解決時までにいずれかのクリーチャーが死亡していた場合は対象に与えられるダメージは5点になる(にしなくてはいけない)という説明があるかも。

 緑のカードの中でいかにもFAQに出番がありそうなのは《解放の樹/Tree of Redemption》なんだけど、じゃあ実際にどんな質問を予想してどんな回答がなされるかというと意外と思いつかない。効果は永続する、とかかな。ちなみにこいつは「4マナ 0/13 防衛持ち」でタップ能力として「あなたのライフの総量と解放の樹のタフネスを交換する」を持っている。

 あと同じように《似通った生命/Parallel Lives》や《荒れ野の本質/Essence of the Wild》あたりもFAQに取り上げられるとは思うんだけど、どんな分かりづらい状況を引き起こしかねないかというといまいち思いつかなかった。

 こうやってみてると緑の呪文ってシンプルなようでいて、レア以上となると青の呪文と同じくらい「ルール破り」なところが多い気がする。

余談8:《災火のドラゴン/Balefire Dragon》

 FAQとしては取り上げられないだろうけど、個人的に《災火のドラゴン/Balefire Dragon》のテキストは、直観的分かりづらさが高いと思う。1回読んだ直後は「?」と首をかしげたくなるような。

 ちなみに効果は「災火のドラゴンがいずれかのプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、それはそのプレイヤーがコントロールする各クリーチャーに、それぞれその点数に等しい点数のダメージを与える」というもの。「それはそのプレイヤーが」とか「それぞれその点数に等しい点数のダメージ」とか、どこまで読んでたのか分からなくなるような表現が。



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